スクランブル交差点を歩けない

大学三年生の秋、そろそろ就活しなきゃなーということで様々な企業・業界を回ってる。IT、広告、人材派遣、アパレル……そもそも人前に出る仕事がしたくて東京に出てきたのになんでオフィスワーカーになろうとしてんのかなーなんてぼちぼち思いながら。

オフィスは大体新宿か渋谷、渋谷の方が若干多いかな。夕方から夜にかけてのインターンだと帰る頃には人でごった返してる訳で。金曜日だってある訳で。

するとごった返す渋谷のスクランブル交差点で、一斉に動き出した人々を背景に大量のフラッシュを焚き、一人の女性をセンターに撮影する一団がある。ってかあった、かな。割とそういうの何組も何度も見かけてんだけどさ。すごい時だと規模の大小はあるけど同じタイミングであっちでもこっちでも撮ってんの。困る。だってそういうの見ると、スッと自分がその他大勢に分類されたような、「私はあなた達と違うのよ」と見せ付けられるような、ただの背景とされたような、そんな印象を受けてしまうから。ようなっていうかまぁ実際私は彼女らからしたらその他大勢で、カーストも下で、背景なんだけどさ。急に胸が苦しくなって嫌な気分になる。こうじゃない、私もあっちが良かったって思いながら帰る。

どんなに身になったな、楽しかったなと思ってもここでうっとなるもんだからほんと精神衛生上よろしくない。いや知ってるよ。私は凡人だし、顔から始まり見てくれもよくない。血の滲むような努力をしたこともないし出身は地方都市。今この状態なんだから私には運も才能も無かった、あの業界だって面白そうじゃん。そう、そう思おうとしても謎の悔しさが私を伏し目にさせる。
何組も撮ってんなら最早それ個性的じゃ無くてあんたらも凡庸じゃん、とか言えるんならいいんだけどね。そんな考えお腹いっぱいでそこそこ眠い、精神的に落ち着いてる今初めて浮かんできたよ。

面白そうな仕事や業界は沢山知れたし、それぞれやりがいもありそうで、熱い大人にも沢山会った。でも。それでも。

さて、一般的に10月1日は内定式。来年の今日、私は笑えてるのかな。どうだかな。