これができないあれはしたい

身バレは覚悟してます。

お魚を食べてない

 私の住んでいる地域でもコロナの陽性反応はまぁまぁ出ており、自粛自粛に努めていた。普段200g程しか買わない豚の細切れは500g。カット野菜ではなく本物ごろっとしたキャベツやにんじんを。マヨネーズも大きいやつを買うなど引きこもれるよう備えていた。計算ではこれで少なくとも6食は肉野菜炒めが作れるため、3日は引きこもれるはずだった。

 しかしそのずっと前からこんな感じの生活が続いていたため、こうも連日連食肉野菜炒めではいくら食にこだわりの無い私でも流石に飽きてきた。お魚、お魚が食べたい。豚じゃねぇ、魚を寄越せ。あんな身体の一部じゃダメだ。頭尻尾骨以外全て食べることのできる焼き魚こそが食物連鎖の頂点である人間にふさわしい。魚、魚を食わせろ……。
 スーパーに行く前に冷蔵庫を覗くと、お肉は300g弱残っていた。消費期限は一昨日だった。無視してそっと扉を閉めた。

 週末の鮮魚コーナーには痩せたさんま2尾300円とタイのおかしらしかなかったが、今日は繁盛してんなぁくらいの品数で、私も選ぶことができた。2尾100円のブサイクなイワシをカゴに入れさあ帰ろうとするとその横にあったかわいらしい物体に目を奪われた。

 鱈の切り身だ。白くつるんとした見た目。灰色の皮とのギャップがなんとも言えないいじらしさを醸し出している。その姿に釘付けになってどれくらいの時間が経っただろう。多分ほんとはそんなに経ってないけど。なぜ私はイワシなんかを買おうとしたんだ。全て食べられる?食物連鎖の頂点?何を言ってるんだ。かわいいが正義だろ。と、少し前の自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。鱈をカゴに入れ、酒などを買い家路を急ぐのだった。

 しかし思い返してみる。今まで鱈を食べたのは冬鍋の中に入ってたもののみ。魚は大体魚焼きグリルで調理すればなんとかなるものの、鱈にあまり焼き魚のイメージはなかった。鱈のラップには「ムニエルに!」と書かれたシールが貼ってある。「鱈の切り身 レシピ」で調べるとムニエルのレシピが出てくる。当方小麦アレルギーである。ホイル焼きの手もあったがバターは品切れ。再度レシピを調べる。ムニエル、ムニエル、パン粉焼き、バターソテー……。

 なーにがいじらしいだ。所詮食べ物なんだから食べられなきゃ意味がないだろう何を考えていて何にそそのかされていたんだ私は。んなわけない。はー?鱈の切り身が?かわいい?何言ってんの???食物連鎖の頂点は!!黙って丸ごと焼き魚!!!栄養素と味だけ気にしてればいいんだよ!!!!





 ところで今日の晩ご飯は豚丼でした。おいしかったです。